来山ポエックグループの2022年8月期を振り返りますと、まず親会社であるポエックは、思うような結果を出すことができませんでした。要因は、半導体不足やそれに伴う制御盤などさまざまな部品の供給が遅れたことで、当社の主力とするポンプなどの納期の遅延や受注の先送りが発生し、売上が伸び悩みました。また、特別損失を計上したため、最終的に当期純利益は赤字となりました。その一方で、非常に好調だったのがグループ子会社です。水産設備向けのチラー・熱交換器を製造・販売する株式会社マリンリバーや、電動機の修理・設置工事のプロ集団である協立電機工業株式会社などの活躍が目覚ましく、1億3,300万円ほど配当金を受領しました。
松村営業面に関しては、当社はこれまで訪問営業をメインにしてきただけにコロナ禍で思い通りの活動ができず苦戦してきました。そこで、昨年新たな営業支援を導入しました。テレアポやマーケティング調査、DM活用などを行って、何が奏功するか模索しているところです。ただ、政府もコロナと共存しながら社会経済活動を進めていく方針に転換しましたから、今後はこれまで控えられていた設備投資が進み、市場も上向くと見ています。
来山営業面について付け加えると、この1年で営業部門に人材を増強しました。非常に優秀な人材が3名入社し、いずれもプライム市場の大手企業と人脈を築いてきたベテランですので、今後はトップ営業として大いに力を発揮してくれると期待しています。
松村2023年8月期は、グループ全体に共通する事業戦略として「陸上養殖」「IoT事業」「グループ間の協業」「M&A」「ウェブマーケティング」の5つを策定しました。これまでは各社ごとにそれぞれ事業戦略を立てていましたが、グループ間のシナジー拡大を目指し、集合体であるポエックグループとして、さらなる成長を図っていく方針です。
まず、陸上養殖は今、自給率向上や輸出の拡大につなげようと国も支援しており、電力会社やテレビ業界など異業種からの参入が増えている成長産業です。実は、昨年子会社化したマリンリバーは陸上養殖設備に関する優れた技術を持っていて、引き合いが非常に多いんです。そこで、一緒にポンプやブロアといったポエックの主力製品の営業を行って、新たな受注を獲得していこうと考えています。
来山マリンリバーは陸上養殖に特化したニッチトップの製品を作っているんです。どのような点でニッチトップかと言うと、魚を養殖する水槽には水温調節を行うために熱交換器が必要なのですが、多くはステンレス製です。それをマリンリバーはチタンで製造しています。チタンを使用することで、海水を入れても腐食せず、詰まらないというメリットがあります。ただ、チタンで作るのは非常に難しく、高い技術を要するため、他社は簡単に真似できない。そこで今、マリンリバーを紹介してほしいという依頼がポエックに数多く来ています。その注目度の高さを活用し、周辺機器であるポエックの製品もご紹介し、受注獲得につなげるという狙いです。まさにM&Aによるシナジー効果です。
松村それに、陸上養殖は海洋資源の保全や技術革新の推進といった点で、SDGsへの取り組みにもマッチすると考えています。
来山その通り。SDGsの達成や二酸化炭素削減に取り組むことは、今や世界的な潮流です。当社は最初からそこを目指してきたわけではありませんが、我々がずっとやってきたことを、まさに今、世の中が求めているんです。
松村IoT事業に関しては、今年、IoTソリューションの総合プロバイダー企業「株式会社テクサー(以下、テクサー社)」に出資し、展示会やイベント等で資料配付などをデータ化して行える非接触型情報受け渡しツール「AiMeet(アイミート)」の販売代理店契約を結びました。
これはテクサー社との協業ですが、ポエック自身もデジタル化やIoTに積極的に取り組み、製品を独自開発していきたいと思っています。例えばIoT技術を応用し、当社のポンプや設備機器にセンサーを取り付けて遠隔管理できるようにする。ポンプが壊れると工場の生産ラインが止まったり、建物内で水が溢れたりしてしまいますから、そうなる前に異常を予知し、予防保全するわけです。これを可能にすれば、お客様の保守管理業務の省力化や省人化に大きく貢献できると考えています。
来山テクサー社の製品は大手ビルメンテナンス会社も使っていて、非常に高く評価されています。同社に投資したことで、例えばビルのポンプ交換などが必要な時は我々に声をかけてもらえる。お互い持ちつ持たれつの関係ですから、これから着々とグループ内連携の効果が出てくると思います。
松村前述したように、今後はグループ各社が取引先を共有するなど協業を進め、市場の拡大や売上アップを図っていきます。また、ウェブマーケティングも活用し、集客アップを狙います。そしてM&Aは、グループでの取り組みに関してより相乗効果が創出できる相手とやっていきたいですね。
来山我々は、会社が成長していくための近道のひとつはM&Aだと思っているんですよ。ただ、当社の事業領域と関係のないM&Aは極力しない。今までM&Aを9社行いましたが、今後もさらにM&Aを加速させていきたいと思っています。
松村これまで述べた5つの事業戦略を踏まえてグループ全体で協業していこうということで、このほどポエックグループとして「ビジョン」「ミッション」「経営方針」「約束」から成る企業理念を初めて掲げました。
まず、ビジョンは『誰もが欲しがる「凄い技術とサービス」の創造企業』、ミッションは『役職員とその家族の幸せ』『お客様の満足』『株主への還元』『ステークホルダーと共に成長し良好な関係を維持』『住みよい社会と環境』です。経営方針は、『投資・育成・成長サイクルを通じてグループビジョンの実現に向けた経営戦略を実行』。約束は、『コンプライアンスとモラルの向上』『「安全」と「環境」への配慮』『革新と変化へのチャレンジ』です。グループ全体で事業戦略を立て、それらを着実に実行していけば、必ず皆様のご期待に添えるものと思っております。
グループ企業理念
ビジョン
- 誰もが欲しがる
「凄い技術とサービス」の創造企業
ミッション
- 役職員とその家族の幸せ
- お客様の満足
- 株主への還元
- ステークホルダーと共に成長し良好な関係を維持
- 住みよい社会と環境
経営方針
- 投資・育成・成長サイクルを通じて
グループビジョンの実現に向けた経営戦略を実行
約束
- コンプライアンスとモラルの向上
- 「安全」と「環境」への配慮
- 革新と変化へのチャレンジ
来山私からも2023年8月期に向けて抱負を述べますと、コロナの感染状況が一段落すれば今期の業績は大きく飛躍すると考えています。理由は、まずトップ営業ができる優秀な人材がメンバーに加わったことで、今まで縁がなかった業種や規模の企業にもアプローチし、販路を開拓していきます。そして飛躍を確信するもう一つの理由は、マリンリバーのように、日本がこれから注力していく分野の技術をすでに有していることです。世界的な海洋資源や環境への関心の高まりは我々にとっては追い風です。
松村すでに、今期、来期の連結売上高に計上見込みの大型案件を受注していますしね。
とはいえ、株主の皆様のご期待に添えていないことについては、真摯に受け止め、深くお詫び申し上げます。皆様の期待に応えられるよう、これからポエックグループの総力を結集し、新たなイノベーションを生み出すような事業の創出に全社一丸となって取り組み、さらなる成長と企業価値の向上を図ってまいります。今後とも変らぬご支援、ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。
来山前期の業績についてはお詫びするしかないと思っております。それでも株主還元につきましては、17期連続配当を継続いたします。
これまで株主の皆様からお叱りを含め多くの叱咤激励をいただいてきました。しかし、先行きは非常に明るいと、私はここであえて申し上げたいと思います。これからは、ただ夢を語るのではなく、語った夢を実現していける。今期からは間違いなくそうなっていくと確信しています。
「ポンプの専門家集団」からスタートし、
現在の「環境・エネルギー事業」「動力・重機等事業」「防災・安全事業」を支えるグループ会社を紹介いたします。
今回は2008年にポエックグループのメンバーとなった東洋精機産業株式会社です。
東洋精機産業はどのような会社なのか、強みやポエックグループにおける役割などについて2021年11月社長に就任した
代表取締役社長中澤 哲則さんにお話を伺いました。
東洋精機産業ってどんな会社?
高圧にも耐える精密部品専門のメーカー
大型船舶はディーゼルエンジンで多く動いていますが、そのディーゼルエンジンの心臓部となる噴射装置のポンプから噴射の先端のノズルまで、高圧がかかる非常に厳しい環境で使われる精密部品を作っています。大型船舶のエンジンそのものは巨大ですが、当社が担当する心臓部はそんなに大きくなく、一つ一つの部品は人間が両手で持てるサイズです。高圧に耐えられるよう非常に固い材料で、細密な加工を施し、擦り合わせによりガタがなく漏れのない、非常になめらかな嵌合(かんごう)状態(機械部品の組み合わせのこと) に仕上げています。
東洋精機産業のオンリーワン
一貫生産を可能にするフルラインナップの設備と高度な生産管理体制
当社が行う加工の一つに熱処理がありますが、熱処理は今日いただいたら明日お返しするというスピード感で行っています。私たちの売りは熱処理工程から旋盤もマシニングも仕上げも、全て一気通貫で行える設備や工程が揃っているということです。一つ一つの機械はそこまで珍しくはありませんが、一連全てセットで揃えて保有しているところはあまりありません。その一連の機械設備が高度な一貫生産を可能にしています。
時には図面1枚を元に、30年前のこの部品を作ってくれませんか、という依頼をいただくこともあります。いただいた図面1枚から材料を調達し、加工を行いお客様にお届けする。これは長年の経験とノウハウ、社内一貫生産ができるフルラインナップの機械設備と生産管理体制があるからこそであり、当社のオンリーワンの強みです。
ポエックグループの一員として
上場企業の一員としての意識をもって
私は東洋精機産業への入社は2020年ですので、グループ加入時期は在籍していなかったのですが、いろんな人に当時の事を聞くと、グループ加入により資金繰りに余裕ができ、投資も積極的に行えるようになったと喜んでおりました。それは最大のメリットであったのだろうと思っていますし、私自身も東証スタンダード市場の親会社がいて、その主要な構成企業の一つであるということは当社の大きなメリットだと思っています。従業員に対しても、株式を上場している会社の構成企業だから、小さい町企業ですけど大手の企業並みにコンプライアンスを守るなど、ちゃんとしていかなきゃいけないとよく話しています。
ポエックグループの中で当社は事業の内容が少し違うので、親会社やその他の子会社とのシナジー効果を感じられる場面は今はまだ少ないのですが、やはりグループとしてなにかしらのシナジーを今後発揮していきたいと考えています。
これからの東洋精機産業
業務改革を進め、よりやりがいのある会社へ
私は東洋精機産業の業務改革をするために入社しました。自動車関係の部品会社から来たのですが、入社当時は、業務のムダが多いことに正直驚きました。そこで1カ所まず代表的に改善をし、モデルケースとして展開しようと思い、1つの作業場のムダを見直し、4Sと効率化、品質の改善を追求した結果、非常に効率が上がりお客様からも好評価を受けました。入社して半年後に成果が出ていなかったら身を引く覚悟で真剣にやってきましたね。もちろん従業員の方の協力があってこそです。人間って総じて変化が苦手ですよね。長くやっていればやっているほど変わることは難しい中で前向きに取り組んでくれていると感じています。モチベーションに関わる理論としてハーズバーグの二要因理論にもあるように、例えばお金や働く環境は足らないと不満足を感じますが、足りても頑張ろうという気持ちにはなかなかつながりません。一方でやったことに対する評価や達成感、認知されることなどは、人間を動機づける一番のものだと思っています。例えば、自分に技術が身に付くとか、仕事の内容が褒められるとか昇進とかいくつかありますが、大体が内心的に満足をすることです。満足感が人間の動機を形成するのですね。あとはその人に合った興味などに着目しながら、小さな成功体験を数多く積み上げてもらい、その感謝を言葉で伝えるということに尽きると考えています。私は直接作業の指示をするわけではありませんが、とにかく常に声をかけるように意識しています。最近どう?気を付けてね、ありがとう、と。その積み重ねかなと思います。
コロナ禍で業界全体の生産が控えられていましたが、少しずつ需要は戻ってきていて、売上もだんだん伸びてきています。そこに昨年から材料が色々と値上がりしているので、当社も値上げをさせていただきました。月次の生産金額を伸ばすことと、値上げを行うことで、目の前のことをやり切れば利益は出てくると考えています。社長就任2年目に入って、引き続き小さな改善を積み重ねていくとともに、もう少し大きく考え方の改善をやっていかなくちゃいけないと思い、会社としての個別の小さい改善は2021年11月に採用した人材に任せ、私はもう少し会社全体として利益率を上げていくためには何に優先順位をつけてやっていこうかと、少し観点や視点をずらして考えています。そして、3年目はもっと採算性を考え、仕事があるときには技術レベルの向上を狙えるもの、不採算な製品の改善なども狙える製品へと製品内容を置き換えることにより、会社の利益を上げていけるようにしたいですね。
今は船の領域が中心の事業ですが、今後は船以外の領域についても取り組んでいきたいと思っています。そのために少し不採算でもチャレンジングでやってみたいというものがあれば『採算は気にしなくていい』と社内に言っています。もちろんリピート品として生産する場合は採算性の検討が必要ですが、単発での試作だとか、ホームページを見て依頼してくれた案件などはウェルカムで受けるべきだと思っていて、船に限らず、当社の技術に魅力を感じてくださり、幅広く当社の技術や製品などを好きになってくれるファンを作っていきたいです。ヒットの延長にホームランがあるのと一緒で、そういう顧客開拓の中で潜在的な将来の大きな顧客につながればいいなと思っています。
エネルギー価格の高騰に伴い、特に当社では、熱処理工程が多くの電力を使用するため、電気料金の負担が大きくなっています。そこで、工場の屋根全体に太陽光パネルを敷き詰め、太陽光発電の年内導入を進めています。販売するのではなく、全量自家消費をする予定です。電力も資源ですから、少しでも自然に優しい工場になれたらいいと思います。導入しましたら当社のホームページでご紹介したいと思います。
中澤社長ご経歴
- 1979年
- 今仙電機製作所入社
- 2011年
- 同社 取締役就任
- 2014年
- 同社 アメリカ現地法人 Imasen Bucyrus Technology Inc., 社長
- 2018年
- TENNECO Japan Ltd. Osaka plant Quality Mgr.
- 2020年9月
- 東洋精機産業 入社
- 2021年11月
- 同社 代表取締役社長就任