2023年8月期の業績を伸ばした要因を振り返るとともに、今後の事業展開についてお伝えいたします。
来山2023年8月期は、連結売上高が前期比121.5%、連結営業利益が146.7%と大幅増収・増益となりました。経常利益も前期比143.2%。ここ数年の企業努力、市場の掘り起こしなどが数字になってきたと実感しています。特にこの1年は、上方修正できたことで、ポエックの事業が着実に社会に必要とされ、広がっていると実感できました。
松村ポエックの営業スタイルは対面営業のため、人との接触が限られるコロナ禍はとても厳しいものがありました。3年が経過した2023年5月にコロナウイルス感染症が5類に移行したことにより、対面営業が積極的に再開。さらにコロナ禍で培った経験も加味され、ようやく回復の兆しが見えてきました。また、グループ各社の製品や技術力が、コロナ禍で変化した社会のニーズにマッチしてきたと感じています。
その一方、福祉施設や医療機関等の防災設備のニーズは徐々に持ち直してきてはいるものの、まだまだ新規参入が厳しく低調となっています。その中で注目されるのが、電気や水道がストップしてもスプリンクラーを作動させられる消火装置「ナイアス」です。こちらは災害時に地域のベースにもなりえる医療機関を守る機能が備わっています。今後どのように伸ばしていくかが課題と考えています。
コロナ禍によって人の動きが制限されモノの移動が困難になるなど、社会環境が大きく変化しました。さらに工業製品の部品などが簡単に手に入らない状況となりました。ポエックの製品に多く使用されている電動機モーターもそのひとつです。
それまで行っていた、故障した部品を海外の工場から取り寄せ交換をする基本作業が簡単にできなくなったのです。現在は交換よりも修理・メンテナンスを行う需要が大幅に伸びてきています。壊れる前に対応する、壊れても修理をして使用するという流れができました。ポエックが得意としているこの保守・メンテナンスの需要は、今後も安定的に推移する見込みと考えています。
来山これまで2003年に、主に船舶用エンジンの台板の製造・販売を行う三和テスコが、2008年には精密機械部品や舶用内燃機関部品の製作および組立・金属熱処理を行う東洋精機産業がポエックにグループ入りしました。
新たな部門を設備投資で1から作り上げるのはかなり厳しいと考えていますが、M&Aを積極的に行い新しい事業を効率的に展開してきました。この方針に関しては、今後も適宜ライツ・オファリングなどを利用して資金調達を行い、企業体の価値を上げていきたいと考えています。
松村2021年に連結子会社となったマリンリバーでは、海水用ヒートポンプチラー・チタン熱交換器・活魚水槽などの水槽設備を製造・販売してきました。さらに海水にとどまらず井戸水・水耕栽培・食品工場など、一般のチラーでは対応できない液体の冷却・加温も可能です。こうしたマリンリバーの技術は、今後さらに、環境エネルギー分野にインパクトを与えると期待しています。
海の環境負荷軽減や安定的な生産などから、陸上養殖が注目されています。マリンリバーはその名前の通り、海水に関する高い技術を有しています。海水以外にも転用できる技術なので、陸上養殖に関する案件が増加してきているのです。陸上養殖事業には国の補助金も準備され、まさに国策といえる形で動き始めています。ポエックにとっても大きな追い風です。
また、ポエックの新事業として気象状況に左右されない水耕栽培も注目されており、水耕栽培向け栽培装置の提供を目指して技術開発を進めています。富山県朝日町の用地で水耕栽培されているメロンには、ポエックと民間シンクタンクの連携で開発した機能性微細気泡(ファインバブル・ナノバブル)発生農業システムが使用され、メロン育成に対する影響も比較しました。その結果、システムを取り込んだケースでは育成量、糖度が高いことが分かり、当社が進める技術は付加価値が高いものであると検証できました。現在はメロン等ブランド力のある果物を中心に製造技術の開発をしておりますが、今後は、さらに付加価値が期待できる漢方の製造技術の開発にも取り組み、この事業を早期に収益化することで、高い成長を実施してまいります。そのため、栽培装置の製造設備への投資および実証用温室(ビニールハウス)の建設を予定しています。
来山さらに既存の技術も注目されています。廃棄物処理施設で利用される、有機化合物を分解する亜臨海水装置を使ったプラントは、ダイオキシン発生ゼロ、CO2削減など地球にやさしい廃棄物処理を実現できます。三和テスコの技術を活用し、プラントの心臓部の製造生産体制を拡充していけばこちらの分野での市場も見込めます。
ポエックの事業には、SDGsや脱炭素、カーボンニュートラルといった世界で注目されている環境ビジネスに関わるものが多くあります。新しい技術、既存技術、どちらも今の社会にマッチしニーズもある。それは大きなアドバンテージなのです。
松村三和テスコが開発したTorqueOn(トルクオン)も今後期待している事業です。ベルトコンベアの軸受部分の破損を検知し、これまで人の手によって点検をしていた多くの部分を代行できる優れものです。ベルトコンベアを使用している工場は非常に多いため市場も必然的に大きいと確信しています。
同システムが経済産業省の『スマート保安プロモーション委員会』において、従来の点検を代替するスマート保安技術として認定されました。2023年5月12日に「スマート保安技術カタログ(電気保安)第7号案件」に掲載されたところ、大変な反響をいただきました。
このように関連会社の得意分野とその高い技術を使って、現在のニーズにマッチした事業がどんどん動いています。2024年8月期はこれらをさらに本格的に進めていく年と考えています。
来山ポエックの経営陣のひとりとして、従業員が「入社して良かった」と働きがいを感じられるような環境づくりを目指していきたいです。そして従業員とともに会社を成長させていく。
投資家の皆様に対してはしっかりと配当でお返ししていきたいと思います。弊社は現在18期連続で配当しています。配当性向も2024年8月期は51.9%を予測しています。今後も株主の皆様に喜んでいただけるような経営を心掛けていきたいです。
18期連続で配当実施
私は常日頃から人の出会いが一番大事だと思っています。従業員とも出会いですが、株主・投資家の皆様とも出会いだと考えています。大切な出会いのためには、嘘のない会社であることが大事ですし、自信を持ってポエックはそうであるといえます。今後もポエックを応援したいと思っていただける会社経営をしていきます。
松村新規事業の展開や新製品の開発など、積み重ねてきたものがやっと芽を出してきました。生産体制の再構築、営業範囲の拡大、広範囲における事業展開など課題もあります。ただ、それが解決できればさらに業績は上積みできると確信しています。
今後も時代のニーズにマッチした製品や事業で、大きく飛躍していきたいと考えています。グループとしても企業価値を向上させ、株主の皆様のご期待に応えられるよう、グループ全員一致団結して頑張っていきたいと思います。
そして5年後には、現在の東証スタンダード市場からプライム市場への上場を目標にしています。そのためには年間12億円の経常利益を達成できる会社に成長している必要があります。12億円を超えて15億円くらいになっていれば、5年後の利益は30億円ほどになる計算です。そうなればプライム市場も視野に入ってくるでしょう。倍々と業績を上げていくイメージですね。
現状に満足することなく、生産体制を整えるなどの対策によって、さらに多くの案件を受注し、お客様に満足いただけるサービスを提供することで実現できると考えています。今後とも変わらぬご支援をよろしくお願いします。