

M&A戦略と新規事業でさらなる成長を目指す
2024年8月期の振り返りと2025年8月期の計画、今後の成長戦略についてお伝えいたします。

来山2024年8月期は、連結売上高が前期比118.7%、営業利益が137.7%、経常利益は102.6%となり、売上高・利益とも過去最高を更新。これは、当社グループの製品やサービスの多くが課題解決型であり、SDGs、カーボンニュートラルをはじめとする時代のニーズに合致した事業を継続できている証と考えています。また、2023年8月期のライツ・オファリングにおいて、株主の皆様から拠出していただいた資金をもとにM&Aを推進。その結果、コーベックス株式会社(以下:コーベックス)とアイエススプリンクラー株式会社(以下:アイエススプリンクラー)の2社を取得。当社グループの事業規模をさらに拡大、強化いたしました。

松村セグメント別に振り返ると、環境・エネルギー事業では、養殖設備機器(海水用冷却装置)の製造販売事業が好調です。大手企業の参入もありますが技術的なアドバンテージは大きく、競合不在の市場環境で高水準の需要を維持しています。
動力・重機等事業では、地球環境にやさしい大型船舶用ディーゼルエンジン需要の高まりを受けて、燃料噴射ノズルをはじめとするエンジン部品の精密加工、設計・製造の受注が拡大。円安や経済安全保障に伴う国内回帰の動きも味方して、売上・収益とも大きく増加しました。
防災・安全事業は、コロナ禍で停滞した病院・福祉施設等における自社製品スプリンクラー消火装置「ナイアス」の需要回復が遅れており、低調な推移となりました。

来山2025年8月期は、売上105億円(前期比125.4%) 営業利益10億円(前期比180.1%) 経常利益10億円(前期比232.2%)を計画しています。M&Aが成長戦略の軸である以上、20%以上の売上成長を目標とするのは当然で、下方修正はあってはならないと考えています。今期も増収・増益を達成できるよう、全社一丸となって取り組みます。
2025年8月期 業績予想
松村環境・エネルギー事業では、需要が増加している養殖設備機器(海水用冷却装置)の生産体制を強化していきます。また、2024年8月期に子会社化したコーベックスの有機溶剤回収リサイクル装置の受注拡大を図ります。コーベックスはすでに売上高の25%が海外にあり、さらに新興国では製造業の発展に伴い排出規制が強化される見込みのため、需要増が期待でき、今までの何倍もの売上が期待できると考えています。
防災・安全事業ではアイエススプリンクラーの消火用スプリンクラーヘッドの受注拡大を目指します。いずれも循環型社会の成長に貢献している製品であり、有機溶剤回収リサイクル装置と消火用スプリンクラーヘッドは2025年8月期よりポエック本体の販売網を使って全国的に営業活動を展開しますので、売上・収益とも大きく伸長すると期待しています。
防災・安全事業においては、当社グループの主要製品であるスプリンクラー消火装置「ナイアス」の営業活動を、アイエススプリンクラーが持つ大手ゼネコン、防災商社等への販路を使い展開していきます。
来山2023年7月に発表させていただいた3つの新規事業――水耕栽培農業、亜臨界水プラント、TorqueOn(トルクオン)についても大きく前進できると考えています。
松村水耕栽培農業は、この1年で蓄積したメロンの水耕栽培、レタスのLED栽培のノウハウと自動化・効率化のシステム・装置の提供を開始します。水耕栽培はさまざまな企業が参入していますが、自ら蓄積した最先端の技術とノウハウを製品化して価値を高められるのが我々の強みです。従来の農業からの転換も可能であり、導入に関するお問い合わせも多数いただいていますので、引き続きご注目ください。
亜臨界水プラントは、2024年8月期に受注した大型製造プロジェクトの初号機案件(有機化合物分解ごみ処理施設に利用される亜臨界水反応装置)の納入が間もなく完了します。この実績を活かし、2025年8月期も大型案件の受注を目指します。
TorqueOn(トルクオン)は、現在、大手メーカー様で試験導入をおこなっています。そのデータを分析・検証して製品化につなげていくことが2025年8月期の目標です。


来山成長戦略の軸は2つあります。1つは積極的なM&Aです。私たちはこれまでに11件のM&Aを実行して、メーカー機能を高めて付加価値を増幅し、シナジーによって企業価値を高めてきました。その戦略は今後も不変です。M&Aのテーマは、「技術を見つけ、育て、活かす」こと。今後はSDGsやカーボンニュートラルをはじめとした地球全体の課題に対する貢献意欲と、将来的に有望な独自技術の有無に主眼を置いて進めていきたいと考えています。
松村もう1つは新規事業の推進です。水耕栽培農業は、当初の計画よりもはるかに速いスピードで実証実験による技術の積み上げが進んでおり、システム・装置の製品化と販売収入を明確に意識できるところまで来ています。それが実現すれば、コンサルティングやFC展開によって収益力を高めていきたいと考えています。従来の農業は後継者不足で休耕地が増えていますが、水耕栽培は屋内で完結できる農業です。身体的な負担が少なく、定年後に始めても長く続けることができるので国内市場での成長が期待できます。
来山亜臨界水プラントは新しい技術ではありませんが、従来の廃棄物焼却で問題となっているダイオキシン・CO2を発生させないという点で注目されている技術です。これから導入が期待される分野の考察も進んでいるようなので、近い将来、国内市場規模が拡大する可能性は十分にあります。しかし、我々が目指しているのはグローバル市場での事業拡大です。環境に優しく、分別の手間もなく、発電にも活かせる亜臨界水プラントを必要としている国は多数あり、プラントの心臓部といえる高圧高温設備の受注実績のある当社グループへの注目度も高まっています。すでに海外でのプラント建設実績が豊富な企業からお問合せをいただいていますので、今後の展開に期待していただければと思います。
TorqueOn(トルクオン)は2023年3月に経済産業省/製品評価技術基盤機構(NITE)の「スマート保安技術」の技術認定を受けたことで注目度が高まっています。国内の普及率はまだまだ低いのですが、2024年度内には量産化体制が整います。利益率の高い製品ですので、電力会社や製鉄会社への導入が進めば、収益が伴ってくると思います。これも3~5年後にはグローバル市場へ参入したいですね。ターゲットは、日本よりもスケールの大きなベルトコンベアラインを必要としている米国、中国、豪州など。当社グループには海外における販売網だけではなく、製造からメンテナンスまでワンストップで提供できる技術とノウハウを蓄積しています。これらを活用すればポエックの主力製品である各種ポンプ装置以上の事業規模になる可能性を秘めていますので、楽しみは尽きません。

来山私は株主の皆様と同じくらい、当社グループの全従業員を大切に思っています。どの会社よりも報酬が高くて働きやすい環境なら、いい人材が集まってきて愛社精神が育まれる。私はそう信じているからです。
M&A戦略によってグループ会社は毎年のように増えており、ステークホルダーの皆様から「何が本業なのか?」と問われる機会も増えてきましたが、私はこれからも胸を張って「すべてが本業です」とお答えしたいと思っています。そうあるためのポイントもやはり人材で、今後は従業員の向上心に応えるための教育・研修制度と、従業員の心身の健康を支える福利厚生制度の充実度も高めてまいります。
松村 株主の皆さまへの利益還元を経営上の最重要課題の1つと考え、19期連続配当を継続中の当社グループでは、2024年8月期の1株当たりの配当を53円とさせていだだきました。これは、戦略的な思考で実行してきた経営が実を結んでいる証と考えております。
19期連続で配当実施
今後も持続可能な社会の実現に貢献する「社会課題解決型企業」として飛躍を目指すことで、株主の皆様をはじめとするステークホルダーの方々に利益を還元できるよう、グループ会社一丸となって企業価値の向上に努めてまいります。そして3年後には経常利益20億円突破、東証プライム市場への上場を実現できるよう業績の向上をはかってまいりますので、より一層のご支援をお願いいたします。

「ポンプの専門家集団」からスタートし、
現在の「環境・エネルギー事業」「動力・重機等事業」「防災・安全事業」を支えるグループ会社を紹介いたします。
今回は2024年4月にポエックグループのメンバーとなったコーベックス株式会社です。
コーベックスはどのような会社なのか、強みやポエックグループ入りした背景などについて、
代表取締役の松原 啓一さんにお話しを伺いました。
コーベックスってどんな会社?
カーボンニュートラルに貢献できる装置を取り扱っている会社
当社は社会的な課題であるカーボンニュートラルに貢献できる装置を取り扱っている会社です。具体的に説明しますと、主に有機溶剤のリサイクルを目的とした装置の製造・販売です。有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称で、塗装、洗浄、印刷等の作業に幅広く使用されています。当社が製造・販売している装置は、使用後の有機溶剤を回収し、再利用可能な状態に浄化する装置となっています。そのため当社のお客様は自動車業界や印刷業界、半導体業界など多岐にわたる業種の工場ですので製造現場は全て対象となると考えており、大手企業から中小企業まで、また海外も含め幅広い顧客層を持っています。当社の取り扱うシステムは大気中への有害物質の排出を抑制し溶剤の再利用を可能にするため、環境問題の解決の一助を担うことができると考えております。
社会的にリサイクル・リユースという言葉が浸透していなかった1969年から事業に着目し、今年で創業55年、設立54年の実績があります。
コーベックスのオンリーワン
特許も取っているオンリーワン技術
当社の真空式装置は、従来の蒸留方式に比べてランニングコストが大幅に削減でき、環境負荷も低減できることが特徴となっています。独自の真空技術を使い連続蒸留回収ができる装置が特許も取っているオンリーワンの技術です。この技術は安全性や効率性、コスト削減につながっております。そもそも有機溶剤は可燃物なので危険性の高い液体です。有機溶剤と酸素と火元、この3つの条件がそろうと延焼を起こしてしまうのに対して、真空を採用しこの3要素のうちの『酸素』を無くすことで延焼リスクを排除し、安全に使用することができます。また、真空環境で気圧を下げることにより溶剤の沸点を下げることができるので、電力エネルギーの効率もよく、ランニングコストの低減にも寄与できます。

ポエックグループの一員として
コーベックスが持っている技術を活かす
グループ入りを決めたポイントの1つは来山会長の目指している環境意識やグループの在り方に共感したことです。グループ入りをすると普通だと吸収されて飲み込まれるようなイメージがありますが、ポエックはそうではない。独立した個の会社がグループとして同じベクトルを共有していると感じております。今のコーベックスが持っている技術を活かしていけると思い決断しました。グループ入りしたことで、上場会社であることに対するステークホルダーを意識した仕事や組織づくりなど、意識改革について大きく変化があると考えております。
シナジーという面では直接的なシナジーは現段階ではあまりないのですが、グループに入ったことで今まで当社が関わってこなかった事業や市場に対しても新たな接点が生まれ、新たな展開が可能になってくるなどの、広い意味でのシナジーを期待しております。また、当社の事業はポエックグループにとって今までタッチしたことのない市場ですので、新たな展開にもつながると考えております。
これからのコーベックス
新しい領域への展開・開発
単なるリサイクル装置の製造販売だけでなく、その上流側にある洗浄機や液体の販売など、近しい領域の事業に拡大していきたいと思います。また、今まで当社のお客様は大手企業が多かったですが、カーボンニュートラルの観点では中小企業もターゲットとなります。資金面というハードルを解決するために、装置を購入していただくのではなく、使用した分だけ費用が発生するようなサブスクリプション型のビジネスモデルも検討中です。
さらに、当社は2023年にシンガポールに現地拠点を開設いたしました。アジアへ拡大を進めていますが、まだ競合他社がない状態です。海外市場は日本と比較して10倍以上と言われており、マーケットポテンシャルとビジネスチャンスはとても大きいと考えておりますので、「made in Japan」ソリューションを提供し、成長につなげていきたいと思います。
他にも新しい領域への展開・開発を予定しておりますので、ご期待いただければと思います。

松原社長ご経歴
三菱商事フューチャーズ証券(現楽天証券)で、主にエネルギー関連銘柄の営業に従事し、その後、起業経験を経て、KOBEX株式会社へ入社。
製造の組み立て、CADを使ったメカ設計、PLCのソフト設計、生産管理、メンテナンスまでのモノづくりの一連の業務を経て、2017年から営業技術部長として経営企画・財務部門の業務にも参画。
2024年より代表取締役に就任。

前期比2桁成長の大幅増収・増益